本はいいですよね。
僕は普段からよく本を読んでいるのですが
中でも小説は格別です。
たった数百ページで僕たちを想像の世界に連れて行ってくれます。
最近ではその数百ページすらもたった1枚のタブレットの中に収まるようになってきて、読書はこれまで以上に簡単に楽しめるようになってきました。
僕は最近の電子書籍の台頭には肯定的です。
本は紙じゃないといけない!、とは思っていません。
ただ、読書がこれまで以上に簡単になった今、皮肉にも、僕たちは本を読まなくなってきました。
ここでネット社会についてうだうだと持論を展開するつもりはありません。
そもそも、ネットの情報と小説に泣いてある内容は全く違う種類のものです。
これまで以上に本を読まなくなった現代でも、素晴らしい作品はどんどん出てきています。
もしみなさんが最近本を読んでいないのであれば、ぜひこの機会に、短い物語でも良いので読んでもらいたいところです。
もちろん、タブレットやスマホで読んでも良いと思います。
本を読んでいる人が好き
前置きが長くなりますが、僕は、本をたくさん読んでいる人が好きです。
よく、子供の頃に親や先生たちは「本をたくさん読むべきだ」と口々に言ったものですが、それはなぜでしょうか?
「くそまじめ」な意見を言うならば、語彙が増えるからとか文学の勉強のためになどがあげられるでしょうが、僕は圧倒的に「想像力のため」だと思っています。
誰かと面と向かって話していると、その人がどんな人物か分かってきますよね。
もちろん、その人の言葉遣いや態度、知識など具体的な部分からも判断できますが、やはり面と向かって話すとその人の人となりがなんとな〜く感じられてきます。
僕は初対面の人と少し話すと、その人の器量というか、どういう思考をしているかといったことがだいたいわかるのですが、
本をたくさん読んでいる人はなんとなく分かります。
僕が思うに、本をたくさん読んでいる人は話をしている時に、頭の上に大きな風船のようなものがあって、そこではいろんな知識や思いがぐちゃぐちゃとしているのだと思います(もちろん、本を呼んでいなくても想像力が豊かな人はたくさんいます!)。
そこからいろんなものが出てきて相手を楽しませてくれる。
ぜひ、そういった人になりたいものです。
伊坂幸太郎を語りたい
さて、やっと本題ですが、やはり現代でも本はたくさん読んで行こうぜ!ということで、マイフェイバリット小説家である「伊坂幸太郎」さんの作品を紹介したいと思います。
伊坂幸太郎は記事執筆時点では47歳、誰もが知る有名な小説家です。
多くの作品が映画化されたことでもその知名度を伸ばしているのではないでしょうか?
本屋さんに行って伊坂幸太郎の名前で作品を探せば、とても多くの作品が見つかります。
今でも年に数個の作品を発表しており、ファンを飽きさせない小説家です。
作風は一言で言えば「フレッシュ」でしょうか。
言葉の言い回しやストーリーに、僕は爽やかさを感じます。
非常に読みやすく、様々な作品や偉人の言葉などからの引用が多彩で、読者をクスリと笑わせる工夫も随所に散りばめられています。
【ジャイロスコープ】
新潮文庫 2015年 302p
伊坂幸太郎は多くの短編小説集を書いています。
このジャイロスコープが最新のもので(たぶん)、他には、『ラッシュライフ(2002)』、『フィッシュストーリー(2007)』、『終末のフール(2009)』など多数あります。
それらをすべて僕は読んだのですが、僕としてはジャイロスコープが一番良かったですね。
そもそも、短編小説集なので、全体で評価するものではないかと思いますが、バランスが良くてこれが一番好きです。
特に2番目に収録されている「ギア」というストーリーが好きですね。
これは結構ファンが多いみたいなのですが、謎の生物「セミンゴ」に追われるバスの中で繰り広げられる奇妙なやりとりが印象的な作品です。
しかも、この物語の最後の一行が印象的。
主人公は結局誰だったのか?「セミンゴ」は現実にいる生物なのか?そもそもこのストーリー自体が夢のようなものなのではないか?
このような疑問を読者に沸き起こす一文で、この物語をより奇妙で理解しがたいものにしている要因です。
あとは、5番目のストーリー「一人では無理がある」も個人的には好きですね。
サンタクロースは実在するのか?
実は、いたんですね。
この話はシュールでありながら夢に満ちていて、そのギャップがなんとも印象的な作品です。
短編小説集は一つ一つがすごく短いのでサクサク読めて楽しいです。
また、一つ一つの作品に個性があって、飽きることなく楽しむことができますよ!
【死神の精度 / 死神の浮力】
文春文庫 2008年/2016年 345p/528p
これらの作品は設定がものすごく面白いです!
メインとなる登場人物は”死神”の「千葉」です。
この千葉はこれから死ぬ予定の人間の様子を監督して、死亡して良いかどうかの判断を下すんですね。
しかもこれは仕事としてやっていて、人間の社会と同じような会社のようなものに属していて、そこでの仕事としてやっているんです。
千葉は死亡する一週間前に対象の人間の近くに現れて、その人間に接触して判断をします。
この死神の”生態”が面白いんです。
死神に直接触れた人間はたちまち血の気が引いて卒倒してしまうため、死神たちは直接触れないように常に手袋をしています。
死神なので当然死ぬことはなく、「死神の浮力」では何度も人間であったら死んでいたような状況に陥りましたが、死神の千葉は平然と仕事を続けていました(笑)。
さらに、死神には感情の一切がありません。
そのため、人間たちとの会話はなんだか噛み合っておらず、それがまた死神の面白さを引き立てています。
「死神の精度」は結構古くて2008年の作品です。
こちらは短編小説集の形式をとっていて、全部で6つのストーリーで構成されています。
そして、物語を最後まで読むと「ああ、なるほどね!!」という感動があります。
この詳細は、ぜひ本書を読んで体感してみてくださいね!
「死神の浮力」は「死神の精度」から8年後に出された作品です。
この作品は短編小説集ではなく、読み切りの長編小説になっています。
本作でも、相変わらず千葉は感情を見せず淡々と仕事をしていくのですが、まさかのアクションシーンが満載でした。
「死神の精度」を読んだ方なら分かると思うのですが、死神の千葉は決してアクションシーンが似合うようなキャラクターではありません。
それが本作ではかなり積極的に行動をしており、後半ではかなり大規模なアクションシーンを見ることができます。
この点も本作の面白さの一つと言えるでしょうね。
【終末のフール】
集英社文庫 2009年 382p
この作品は短編小説集なのですが、設定が秀逸です。
8年後に小惑星が衝突し地球が滅亡すると言われてから5年が過ぎた中で、残された3年を目の前に様々な人たちが生きていく様を描いた作品です。
終末を目の前にした人間はどのような行動に出るのか、残りの時間をどのように過ごすことが幸せなのか、それらがとてもリアルに表現されていて臨場感があります。
「死」を目の前にした人間たちというかなりシリアスな内容ながら、登場人物は個性に富んでいるのでサクサク読み進めることができます。
僕が一番好きなのは、本作の中に収録されている「鋼鉄のウール」です。
地球の滅亡を前にしてもただ淡々と練習に打ち込む”苗場”というボクサーが登場するのですが、この苗場は常に冷静でストイックな人物です。
無口だが、放つ言葉は自身と説得力に満ち溢れており、その眼光は鋭く、目を合わせた者を緊張させるほどです。
この苗場が非常にカッコ良いんです。
終末を目の前にしても自分を曲げずに強く生きる。
しかし、その強さというのも一般的な強さとは異なっていて、寡黙でストイックな苗場の持つものは”本当の強さ”のような気がします。
しかも、この苗場、実在するそうです!
モデルは筆者が取材をしたボクシングジムに在籍しているボクサーだそうです。
本作を全て読んだ後でも、この苗場という人物の印象が一番強く残っています。
まだまだ語りたい
さて、ここまでいくつかの作品を紹介してきましたが、僕はまだ満足できていません。
これ以外にも多くの作品を読んでおり、可能な限りその魅力を伝えていきたいと考えています。
今回の記事を読んでくださった方々が、伊坂幸太郎の作品に興味を持ってくれると嬉しいですし、それ以前に、もう一度本を読む良い機会になれば幸いです。
多分、第2弾をそのうち執筆すると思いますので、お楽しみに!
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